電子帳簿保存法での領収書・請求書の保存方法|個人事業主のやり方と3つのルール
※本記事にはPR・広告リンクが含まれます。
取引先からPDFの請求書がメールで届く、ネット通販の領収書をWebの購入履歴からダウンロードする。個人事業主やフリーランスでも、こうしたやり取りは日常的です。ではその領収書・請求書は、印刷してファイルに綴じておけばよいのでしょうか。
この記事では、電子帳簿保存法における領収書・請求書の保存方法を、国税庁の一次情報をもとに「受け取ったら何をするか」という手順の形で整理します。制度の全体像ではなく、今日から手を動かせる部分に絞って解説します。

出典: Unsplash
結論
先に結論です。電子帳簿保存法には3つの区分がありますが、個人事業主が必ず対応しなければならないのは「電子取引データ保存」だけです。残りの2つは任意で、対応しなくても法令違反にはなりません。

出典: Unsplash
| 区分 | 主な対象 | 対応 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフトで作成した帳簿・決算関係書類 | 任意 |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った領収書・請求書等を画像データ化する | 任意 |
| 電子取引データ保存 | メールやWebでやり取りした請求書・領収書等のデータ | 義務 |
この区分は国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトで案内されているものです。つまり、紙で受け取った領収書をわざわざスキャンして電子化する義務はありません。紙のまま保管すれば足ります。
一方で、メール添付のPDF請求書やWebサイトからダウンロードした領収書は、紙に印刷して保存するだけでは要件を満たさず、電子データのまま保存する必要があります。対象は請求書だけでなく、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書など、書面でやり取りしていれば保存が必要だった書類に相当する電子データ全般です(国税庁リーフレット「電子取引データを適切に保存できていますか?」)。
最初に確認すること|紙で受け取ったかデータで受け取ったか
ここからは、領収書・請求書を受け取ったときの具体的なやり方を、受け取り方ごとに分けて見ていきます。やるべきことを分ける基準は、書類の種類ではなく受け取り方です。同じ経費の領収書でも、店頭で紙を受け取った場合とWebでダウンロードした場合とで扱いが変わります。
- 紙で受け取った(店頭のレシート、郵送された請求書など)→ 原則そのまま紙で保管すればよい
- データで受け取った(メール添付のPDF、Web請求書システム、クレジットカード利用明細のダウンロードなど)→ 電子データのまま保存し、3つのルールを満たす
まずは手元の書類をこの2つに仕分けしてみてください。仕分けさえできれば、あとはそれぞれの手順に従うだけです。

出典: Unsplash
紙の領収書・請求書はどう保管すればよいか
スキャナ保存をしないなら紙のまま保管でよい
紙で受け取った領収書・請求書を画像データ化して原本を破棄する制度が「スキャナ保存」ですが、これは任意の制度です。利用しない場合、紙の書類はこれまでどおり紙のまま保管すれば問題ありません。
「電子帳簿保存法が始まったから領収書を全部スキャンしなければならない」というのは、よくある誤解です。保管場所に余裕があるなら、無理に電子化しないという選択も十分に合理的です。

出典: Unsplash
スキャナ保存を選ぶ場合に必要になること
紙を減らしたい場合はスキャナ保存を選べますが、その場合は法令上の要件を満たす必要があります。タイムスタンプ(データの存在時刻と非改ざんを証明する仕組み)については要件が緩和され、付与の期限は「最長2か月とおおむね7営業日以内」とされています。訂正・削除の履歴が残るクラウドシステム等を使う場合は、タイムスタンプ自体が不要になるケースもあるとされています。
ただし、要件は他にもディスプレイ・プリンタ等の備付けや検索機能の確保などがあり、詳細は改正で変わり得ます。導入前に国税庁の一問一答【スキャナ保存関係】で最新の要件を確認してください。手間に見合わないと感じるなら、紙のまま保管する運用のままで構いません。
PDF等で受け取った請求書・領収書を電子保存する3つの手順
ここが本題です。電子取引データの保存には、次の3つのルールがあります。順番に片づけていきましょう。
手順1|改ざん防止の措置をとる
改ざん防止として、次のいずれかの措置が必要です。
- タイムスタンプが付与されたデータを受け取る
- 受け取った後に自らタイムスタンプを付与する
- 訂正・削除の履歴が残るシステム(またはそもそも訂正・削除ができないシステム)でデータをやり取り・保存する
- 改ざん防止のための事務処理規程を定めて運用し、備え付ける
このうち費用がかからないのは4番目の事務処理規程です。個人事業主が単独で対応する場合、規程を作って運用する方法が最も現実的な選択肢になります。この規程が果たす役割を考える手がかりは、すぐ上の3番目の選択肢です。3番目は「訂正・削除の履歴が残るシステム」を使う方法でしたが、4番目の事務処理規程は、専用システムの代わりに自分の運用ルールで同じ目的(データを勝手に書き換えない、書き換えるなら記録が残る状態にする)を達成する方法だと捉えると分かりやすくなります。規程の様式や具体的な書きぶりについては、国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトで案内されている情報を確認してください。
手順2|保存データを確認できる環境を用意する
2つ目は、保存したデータを確認できるディスプレイやプリンタ等を備え付けることです。要件としては地味ですが、税務調査の際にデータをすぐ画面に出して見せられる状態にしておく、という趣旨です。
普段の仕事で使っているパソコンとプリンタがあれば、特別な準備をしなくても満たせるケースが多いでしょう。逆に、スマホだけで完結させていてPDFを開いて印刷する手段がない場合は、印刷できる環境を確保しておくと安心です。
手順3|「日付・金額・取引先」で検索できるようにする
3つ目が検索要件です。保存したデータを「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3要素で検索できるようにし、加えて日付または金額の範囲指定検索、2つ以上の要素を組み合わせた検索ができる状態にします。
専用システムがなくても対応できます。国税庁は次の2つの方法を具体例として示しています。
| 方法 | やること | 向いているケース |
|---|---|---|
| 索引簿をつくる | 表計算ソフトに「連番・日付・金額・取引先・備考」を入力し、データ側のファイル名を連番と対応させる | 件数がある程度あり、備考で内容も管理したい |
| ファイル名で管理する | 「日付_金額_取引先」の順で規則的にファイル名を付け、決まったフォルダに集約する | 件数が少なく、シンプルに運用したい |
ファイル名の付け方は、たとえば取引先の株式会社〇〇へ11万円を支払った請求書なら「YYYYMMDD_110000_株式会社〇〇」(YYYYMMDDは受領日を西暦8桁で表したもの)といった形式になります。ルールを決めて、受け取った日にリネームしてフォルダへ入れる。この2動作を習慣にできれば、検索要件はクリアできます。

出典: Unsplash
小規模事業者は検索要件が不要になるケースがある
手順3が面倒に感じた方に朗報です。国税庁は、売上高が一定水準以下の事業者について、基準期間(個人事業主の場合は前々年)の売上高を基準に検索要件そのものを免除するとしています。国税庁リーフレット「電子取引データを適切に保存できていますか?」(令和6年11月)には、次のように示されています。
「基準期間(2年(期)前)の売上高が5,000万円以下の方」等は、電子取引データのダウンロードの求めに応じることができるようにしていれば、③の検索要件を満たす必要はありません。
ここで重要なのは、判定の基礎になるのが前年ではなく前々年の売上高だという点です。個人事業主の場合、2年前の売上高が5,000万円以下であれば、この取扱いの対象になり得ます。

出典: Unsplash
その場合でも、税務調査等でデータのダウンロードを求められたときに応じられる状態は必要です。索引簿やファイル名ルールを整えていなくても、データそのものを提出できるように保管しておくことが前提になります。
対応が間に合っていない場合の猶予措置
原則ルールへの対応が間に合わない場合の猶予措置も用意されています。同リーフレットでは、猶予措置の適用について「事前届出は不要で、『人手不足』『システム整備の資金不足』『システム整備が間に合わない』なども相当の理由として認められます」と説明されています。

出典: Unsplash
条件は次の2つです。自分が今どちらをクリアできているか、照らし合わせてみてください。
- 条件1: 保存要件に従って保存できなかったことについて、所轄税務署長が「相当の理由」があると認めること
- 条件2: 税務調査の際に、電子取引データのダウンロードの求めと、プリントアウトした書面の提示・提出の求めの両方に応じられるようにしておくこと
この2つを満たせば、電子取引データは消さずに保存しておくだけでよいとされています。
ただし、これは「何もしなくてよい」という意味ではありません。データを消してしまえば猶予措置の前提が崩れます。まずは受け取ったPDFを消さずに1つのフォルダへ貯めることから始めてください。
よくある間違いと注意点

出典: Unsplash
最も多い間違いは、メールで届いたPDFを印刷したあと、元のデータを削除してしまうことです。紙に出すこと自体は問題ありませんが、電子取引データは電子のまま保存する必要があるため、原本データの削除は要件を満たさなくなります。印刷するなら「印刷したうえで、データも残す」が正解です。
気になるのは「要件を満たしていないと経費が否認されるのか」「青色申告が取り消されるのか」という点でしょう。国税庁の見解の要旨としては、電子取引データの保存要件を満たしていない事実があっても、そのことのみをもって直ちに青色申告の承認が取り消されたり、支出そのものがなかったと判断されたりするわけではなく、取消しの是非は違反の程度等から総合的に判断されるとされています(個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針))。
とはいえ、リスクがゼロというわけでもありません。要件を軽視してよい理由にはならないため、できる範囲から整えておくのが無難です。
話は変わりますが、青色申告をしている方の中には「65万円控除」を意識している方もいるでしょう。こちらは電子取引データ保存の義務とは別の任意の優遇措置で、e-Taxで期限内に申告するか、「優良な電子帳簿」の要件を満たして保存することが適用の要件とされています。青色申告取消しリスクの話とは別制度なので混同しないよう注意してください。適用を検討する場合は税務署や税理士に確認してください。
まとめ
個人事業主がやるべきことは、突き詰めると3つだけです。紙で受け取ったものは紙のまま保管する。データで受け取ったものは消さずに電子のまま保存する。そのデータを「日付_金額_取引先」のルールで名前を付けて1つのフォルダに集める。

出典: Unsplash
手作業が負担なら、クラウド会計ソフトを使う方法もあります。freee会計やマネーフォワード クラウドなどは、検索要件を満たす形で領収書・請求書データを保存する機能を備えています。ただし対応範囲や料金プランは変動するため、2026-08-26時点の情報として扱い、契約前に各社の公式サイトで最新の内容を確認してください。
制度の全体像を手元の一冊で確認しておきたい方や、紙の領収書もまとめて電子化する環境を整えたい方には、こうした書籍やスキャナーも手順を進める助けになります。
Supported by Rakuten Developers
今日からの一歩は、次の順番で進めるのがおすすめです。
- ステップ1: 「電子取引」という名前のフォルダを1つ作り、直近に受け取ったPDFの請求書・領収書をそこへ移す
- ステップ2: 自分が検索要件の免除対象(前々年の売上高5,000万円以下)に当てはまるかを確認する
- ステップ3: 免除対象に当てはまらない場合は、必要に応じて事務処理規程の準備を進める
制度の細かい要件は改正され得るため、判断に迷う場合は国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトや顧問税理士への確認をおすすめします。
