すてぶるペイとは?パスキーと銀行振込だけで払えるJPYC決済の仕組み【2026年8月提供開始予定】
「ステーブルコインで買い物ができる」と聞くと、ウォレットを作って暗号資産を買って……と身構えてしまう人が多いはずです。そのハードルをまるごと取り払おうとしているのが、2026年8月に提供開始予定の決済サービス「すてぶるペイ(STBLpay)」です。
この記事では、すてぶるペイとは何か、どういう流れで支払いが完了するのか、初回に何を準備すればいいのかを、専門用語をできるだけ使わずに整理します。購入者側・加盟店側それぞれのメリットと注意点も両方扱います。
すてぶるペイとは?結論を先に紹介
すてぶるペイは、合同会社暗号屋が提供するECサイト向けの決済サービスです。2026年7月10日に発表され、2026年8月に提供開始が予定されています(PR TIMES・暗号屋プレスリリース、2026-08-08時点)。
裏側で使われているのは、日本円と1対1で連動する国内初の円建てステーブルコイン「JPYC」です。ただし利用者がJPYCを意識する場面はほとんどありません。買い物をする人がやることは、パスキーで支払いを承認して、表示された口座へ日本円を銀行振込するだけです。
つまり「暗号資産の知識もウォレットの準備も不要で使えるステーブルコイン決済」というのが、すてぶるペイの最大の特徴です。加盟店側もSDK(決済機能を組み込むための開発キット)を自社サイトに入れるだけで導入できます。

出典: PR TIMES「暗号屋、銀行振込で使えるステーブルコイン決済サービス『すてぶるペイ(STBLpay)』を発表」
すてぶるペイの仕組み|パスキー承認と銀行振込だけで決済が完了する流れ
支払いの4ステップ
公式サイトの説明によれば、決済は次の4段階で進みます。
| ステップ | 購入者がやること | 裏側で起きていること |
|---|---|---|
| 1 | 決済画面で支払い内容をパスキーで承認 | 支払い指示が「承認済み」として保留される |
| 2 | 画面に表示されたJPYC EXの口座へ日本円を銀行振込 | 入金が確認される |
| 3 | (操作なし) | JPYC EXがJPYCを発行し、購入者残高へ反映 |
| 4 | (操作なし) | 承認済みの支払いが実行され、加盟店にJPYCが届いて決済完了 |
パスキーとは、パスワードの代わりに顔認証や指紋認証で本人確認を行う仕組みです。ネット銀行や証券会社のログインでも採用が進んでおり、専用アプリを別途入れなくてもスマホやPCの生体認証がそのまま使えます。
すてぶるペイ公式サイトはこの流れを次のように説明しています。
決済フローはまず、ECサイトの決済画面で支払い内容をパスキー(顔・指紋認証)で承認いただき、その後、画面に表示されたJPYC EXの口座へ日本円を銀行振込いただくのみです
— すてぶるペイ公式サイト(2026年7月時点)
ポイントは、購入者が事前にウォレットを用意する必要がないことです。JPYC単体は本来「ノンカストディ型」の電子決済手段で、利用者自身がお金の保管場所(ウォレット)を管理するのが前提とされています(専門的には「秘密鍵」と呼ばれる情報を自分で管理する仕組みです)。すてぶるペイはその部分を吸収している点が、一般的なJPYC利用との違いです(Impress Watch)。
裏側で使われている「JPYC」とは何か
JPYCは、日本円と1:1で価値が連動するよう設計された国内初の円建てステーブルコインです。発行元のJPYC株式会社は2025年8月18日に資金移動業者登録(関東財務局長第00099号)を受け、2025年10月27日午後1時(日本標準時)に発行・償還プラットフォーム「JPYC EX」とともに正式リリースしました。

出典: PR TIMES「【国内初】日本円ステーブルコイン『JPYC』および発行・償還プラットフォーム『JPYC EX』を正式リリース」
発行価値の裏付け資産は日本円(預貯金および国債)で、発行残高の100%以上を保全する設計とされています。対応チェーン(ステーブルコインを扱えるブロックチェーンの種類)はAvalanche・Ethereum・Polygonで、今後順次拡大予定です。仕組みの詳しい説明は本記事の対象外としますが、利用者側は特に意識しなくても支払いができる設計になっています。JPYC株式会社は今後3年で10兆円規模の発行残高を目指すとしています。
初回だけ必要なJPYC EXのアカウント開設・本人確認
すてぶるペイで支払うには、振込先となるJPYC EXのアカウントが必要です。ここだけは初回に手続きが発生します。ただし開設手数料・本人確認手数料はいずれも無料です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 口座開設手数料 | 無料 |
| 本人確認手数料 | 無料 |
| 本人確認の方法 | マイナンバーカードを使ったeKYC(公的個人認証) |
| 購入(発行)の最低額 | 3,000円から |
| 償還(日本円に戻す)の最低額 | 3,000円から |
| 1日あたりの上限 | 100万円 |
| 購入・償還手数料 | JPYC EX側は無料(振込手数料・ガス代は利用者負担の場合あり) |
出典: JPYC EXの口座開設・利用条件に関する解説記事(2026-08-08時点)
開設に必要なのはマイナンバーカードとスマートフォンです。所要時間は情報源によって幅がありますが、おおむね短時間で開設できるとされています。手続きの内容は「本人確認をしてオンライン口座を作る」という、ネット銀行や証券口座の開設に近い作業だと考えるとイメージしやすいでしょう。

出典: PR TIMES「【国内初】日本円ステーブルコイン『JPYC』および発行・償還プラットフォーム『JPYC EX』を正式リリース」
使う人(購入者)にとってのメリットと注意点
購入者にとっての一番のメリットは、暗号資産の知識がまったく要らないことです。ウォレットアプリのインストールも、秘密鍵の保管も、ガス代(送金手数料)の計算も表に出てきません。支払いの体験としては「生体認証で承認して、銀行から振り込む」だけで完結します。
一方で、知っておくべき注意点もあります。とくに影響が大きいのがJPYCの発行下限です。JPYCの発行は1回3,000円以上と決まっているため、3,000円未満の買い物でも3,000円分が発行され、差額はJPYC EXの口座内に購入者の残高として残ります(先述の決済フローの通り、発行されたJPYCはまずJPYC EX上の購入者残高に反映される仕組みです)(innovatopia)。
残高は次の買い物に使えるとはいえ、少額決済で気軽に使うにはやや癖のある設計です。もう一点、返品やトラブルが起きたときの返金対応は加盟店が行う形になります。クレジットカードのように、カード会社が調停役として間に入る仕組みではない点は理解しておきたいところです。
導入する加盟店側のメリットと注意点
加盟店にとってのメリットは、資金繰りとリスク面に集中しています。主なものを整理します。
- 与信審査が不要 — カード決済のような審査プロセスを経ずに導入できる
- 決済と同時に着金 — 入金サイクル待ちや保証金による資金拘束が発生しない
- チャージバック負担なし — ブロックチェーン上で支払いが確定するため
- 導入がSDKのみ — 導入支援と技術サポートは無料で提供される

出典: PR TIMES「【国内初】日本円ステーブルコイン『JPYC』および発行・償還プラットフォーム『JPYC EX』を正式リリース」
チャージバックとは、カード決済で不正利用などが判明した際に売上が取り消される仕組みのことです。EC事業者にとっては読みにくいコストであり、これが構造的に発生しないのは大きな違いになります。
注意点は主に二つです。一つは前述のとおり、返品・トラブル時の返金は加盟店自身が背負う形になることです。
もう一つは、加盟店の決済手数料の料率です。2026年8月8日時点で「検討中」とされ、まだ公表されていません。クレジットカード決済の手数料相場と比較したいところですが、すてぶるペイ側の料率が未公表である以上、この記事の時点で具体的な比較を示すことはできません。全加盟店一律の固定料率を予定し、購入者への手数料上乗せはないとされていますが、正式な料金は提供開始時に案内予定とのことです。導入を検討する場合はすてぶるペイ公式サイトで最新情報を確認してください。
ステーブルコイン業界では、普及の課題として「利用可能店舗の拡大」と「利用者にとって身近な決済インターフェースの整備」が指摘されてきました。店舗側のウォレット管理知識やPOSシステム改修の負担も論点です(nadanews)。加盟店がウォレットを管理せずSDK導入だけで済むすてぶるペイは、この課題に応える位置づけと読めます。
すてぶるペイは安全なのか|JPYCという裏付け資産から考える
安全性を考えるうえで手がかりになるのは、裏側で使われるJPYCの制度的な位置づけです。JPYC株式会社は資金移動業者として関東財務局長第00099号の登録を受けており、無登録の事業者が発行するトークンとは扱いが異なります。
また前述の保全設計に加えて、将来的な資産配分(国債と信託預金の比率など)の方針が二次メディアで報じられていますが、一次発表で数値を確認できていないため、割合を断定した書き方は避けるのが妥当です。
日本の資金決済法には、電子決済手段の発行者に関する保全の枠組みが制度として存在します。ただし、すてぶるペイやJPYCに固有の適用内容までを一次情報で確認できたわけではありません。
利用前に自分でできる確認として、JPYC EXのページに記載されている資金移動業者登録番号(関東財務局長第00099号)が本文と一致しているか、保全資産に関する説明が更新されていないかをチェックする方法があります。またすてぶるペイ公式サイトの利用規約・特定商取引法に基づく表記など、公式が開示している一次情報を実際に開いて確認したうえで判断することをおすすめします。

出典: すてぶるペイ公式サイト
まとめ|すてぶるペイが使えるようになったらまず何をすればいいか
すてぶるペイは、パスキーによる承認と銀行振込だけでJPYC決済を完了できるサービスです。購入者はウォレット不要、加盟店は与信審査なし・即時着金・チャージバックなしという設計で、ステーブルコイン決済のハードルを大きく下げようとしています。
一方で、3,000円という発行下限、返金対応が加盟店任せになる点、そして加盟店手数料が2026年8月8日時点で未発表である点は、使う前に押さえておきたいポイントです。
今から準備できることがあるとすれば、JPYC EXのアカウント開設を先に済ませておくことです。マイナンバーカードがあれば手数料ゼロで手続きでき、対応するECサイトが登場したときにすぐ支払いを試せます。まずはすてぶるペイ公式サイトで提供開始のアナウンスをチェックしてみてください。
