日本年金機構本部庁舎の外観
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106万円の壁は2026年10月1日に撤廃|週20時間パートの社会保険加入で手取りはいくら変わるか

2026年10月1日から、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入条件が変わります。これまで「月額8.8万円未満に抑えれば加入しなくてよい」と就業調整してきた人にとって、その前提が消える改正です。ここでは、自分が対象かどうかの判定、保険料と手取りへの影響、施行日までにやるべき手続きを、公的資料の数字だけを使って順番に整理します。

結論|2026年10月1日に変わるのは「賃金要件」だけ

日本年金機構本部庁舎の外観

出典: Japan_Pension_Service_Headquarters1.JPG / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

変更点は1つに絞られます。短時間労働者の社会保険加入条件のうち、月額賃金8.8万円以上(年収換算で約106万円、いわゆる「106万円の壁」)という賃金要件が2026年10月1日に撤廃されます日本年金機構リーフレット)。

以後は、週の所定労働時間が20時間以上で他の条件を満たしていれば、月収の金額にかかわらず加入対象になります。週20時間・2ヶ月超の雇用見込み・学生でないこと・企業規模(厚生年金の被保険者数51人以上)という他の要件は、今回は変わりません。

対象になると給与から保険料が天引きされるため、当面の手取りは減ります。一方で将来の年金額が増え、傷病手当金などの保障も付きます。従業員50人以下の会社が任意で加入対象にした場合には、本人負担を3年間軽くする制度も同日から始まります。

自分は対象か|5条件をチェックリストで確認

2026年8月時点の加入5条件

現行ルールでは、次の5つをすべて満たす短時間労働者が加入対象です(日本年金機構、確認日2026-08-16)。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上(=106万円の壁)
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生でない(卒業予定者、夜間部・通信制の学生などは例外あり)
  • 勤務先の厚生年金被保険者数が51人以上(2024年10月に101人以上から引き下げ済み)

2026年10月1日以降はどう変わるか

条件 2026年9月まで 2026年10月1日以降
週の所定労働時間 20時間以上 20時間以上(変更なし)
月額賃金 8.8万円以上 要件なし(撤廃)
雇用見込み 2ヶ月超 2ヶ月超(変更なし)
学生 対象外(例外あり) 対象外(例外あり/変更なし)
企業規模 51人以上 51人以上(2027年10月から段階縮小)

上のチェックリストにすべて当てはまるなら、10月1日から加入対象になると考えて準備してください。学生の例外に該当しそうな場合は、勤務先か年金事務所で個別に確認するのが確実です。

なお、賃金要件の撤廃によって新たに加入する人数について、厚生労働省の試算として約200万人という数字が報道されています。これは制度改正がどれくらいの規模の話なのか、全体感をつかむための参考値と捉えてください。本記事執筆時点で一次資料の確認が取れていないため、正確な人数や算出根拠は厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトで最新の公表資料をご確認ください。

いくら変わるか|保険料と手取りの目安

月収8.8万円の場合の負担イメージ

日本年金機構・厚生労働省のリーフレットでは、標準報酬月額(=おおよその月収に基づいて区分される、保険料を計算するための基準額)8.8万円の従業員の社会保険料を、従業員負担・事業主負担ともに月12,500円(合計月2.5万円)として例示しています。本人負担だけで年間15万円相当です。

ただしこの数字は同リーフレット内で「あくまでイメージであり、実際の額とは異なります」と明記されている目安です。実際の保険料は加入する健康保険(協会けんぽか組合健保か)や、介護保険第2号被保険者(40歳以上65歳未満で、給与から介護保険料も併せて天引きされる人)に該当するかで変わります。自分の正確な額は給与明細か勤務先の人事担当で確認してください。

手取りへの影響イメージ(月収8.8万円の場合)

状態 月々の天引き額 年間の目安
加入前(現行) 0円 0円
加入後・保険料調整制度あり(1・2年目) 6,250円 約7.5万円
加入後・保険料調整制度あり(3年目) 9,375円 約11.3万円
加入後・4年目以降(本来の負担) 12,500円 約15万円

※あくまで日本年金機構・厚生労働省リーフレットの試算例に基づく目安です。実際の額は勤務先や条件によって異なります。

従業員50人以下の会社なら3年間の負担軽減がある

2026年10月1日から「保険料調整制度」が始まります。従業員50人以下の企業が労使合意で任意に短時間労働者を加入対象とした「任意特定適用事業所」になった場合、制度利用から通算3年間、新たに加入した従業員の保険料本人負担を軽減し、事業主が一時的に肩代わりする仕組みです。肩代わり分は後日の納付保険料から全額控除されるため、事業主の最終負担が増える設計ではありません。

対象となる従業員は、①週20時間以上、②月収13万円未満(標準報酬月額12.6万円以下)、③学生でない、の3つすべてに該当する人です。リーフレットには「新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者が就業調整せず働けるよう、制度の利用から通算3年間、対象となる従業員の社会保険料を軽減します」と目的が示されています。自分がこの3条件に当てはまるか確認したうえで、下の負担推移を見てください。

期間 本人負担の割合 月額の目安(標準報酬月額8.8万円の場合)
1年目・2年目 本来の25% 6,250円
3年目 本来の37.5% 9,375円
4年目以降 本来の100% 12,500円

※出典は日本年金機構・厚生労働省リーフレット(確認日2026-08-16)。同リーフレットに「あくまでイメージ」と明記された目安であり、実際の額とは異なります。

「106万円の壁」と「130万円の壁」は別物

混同しやすい点を1つ。今回撤廃されるのは社会保険の賃金要件(106万円の壁)で、配偶者の健康保険の被扶養者と認定される年収130万円の基準(130万円の壁)は今回の改正の対象ではないと整理されています。被扶養者の認定基準は健康保険組合や協会けんぽの運用によって細部が異なる場合があるため、扶養に関わる判断は加入先の健康保険組合・協会けんぽに確認してください。

やるべき手続きの手順

パート・アルバイト本人がやること

  1. 自分の週の所定労働時間と、勤務先の厚生年金被保険者数(51人以上か)を確認する
  2. 勤務先から届く加入対象の案内を確認し、基礎年金番号(マイナンバー)を提示する
  3. 配偶者の扶養に入っている場合は、配偶者の勤務先の人事担当に扶養から外れる手続きを確認する
  4. 10月以降の給与明細で、天引き額と標準報酬月額が想定どおりか確かめる

加入手続き自体は勤務先が「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を提出して行うのが基本です。本人側で見落としやすいのは3番の扶養の抜け漏れなので、配偶者の勤務先の指示に従って早めに進めてください。

人事労務担当者がやること

  1. 週20時間以上・雇用見込み2ヶ月超・学生でない従業員を洗い出し、10月1日時点の対象者リストを作る
  2. 対象者へ加入と保険料天引きの開始を事前に通知する
  3. 資格取得届を年金事務所または事務センターへ提出する
  4. 従業員50人以下なら、任意特定適用事業所化と保険料調整制度の利用を検討する

保険料調整制度を使う場合、必要書類は「任意特定適用事業所申出書」「同意対象者の2分の1以上の同意を示す書類」「短時間労働者の被保険者資格取得届」で、電子申請も可能です。すでに対象事業所になっている場合は、対象となった日から2年以内に「保険料調整開始申出書」を提出します(こちらは電子申請不可で郵送または窓口のみ)。

資格取得届など個別書類の正確な提出期限は、事業所の状況や年金事務所の案内によって前後する場合があります。10月の給与計算に間に合わせるには9月中の完了が目安になりますが、余裕を持って早めに管轄の年金事務所または事務センターに確認しながら進めることをおすすめします。

期限とスケジュール|企業規模要件は2035年まで段階的に縮小

厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館の外観

出典: GovernmentOfficeComplexNo5.jpg by BlackRiver / CC BY 3.0

企業規模要件は2026年10月時点では51人以上のまま据え置かれ、2027年10月以降に10年かけて縮小されます。

時期 内容
2026年10月1日 賃金要件(月額8.8万円)を撤廃/保険料調整制度スタート
2027年10月 企業規模要件が36〜50人の企業まで拡大
2029年10月 21〜35人の企業まで拡大
2032年10月 11〜20人の企業まで拡大
2035年10月 10人以下まで拡大(実質すべての企業が対象)

今の勤務先が50人以下でも、いずれは対象になります。根拠となる法律は2025年6月13日に成立・公布された年金制度改正法(令和7年法律第33号)です(厚生労働省)。

手続きをしないとどうなるか

従業員側のリスク

  • 加入手続きが漏れると、その期間は厚生年金の記録に反映されず、将来受け取る年金額に結び付きません。
  • 健康保険の傷病手当金など、加入していれば受けられたはずの保障も対象外になります。
  • 配偶者の扶養に入ったまま加入対象になった場合、扶養から外れる届出を忘れると、配偶者側で後から精算が必要になることもあります。
  • 「対象になっていることを知らなかった」は手続き漏れを避ける理由にはならないため、10月以降の給与明細で天引きの有無を必ず確認してください。

企業側のリスク

  • 加入義務のある従業員を未加入のままにした場合、後になって保険料を遡って求められる可能性があります。遡る期間や金額は個別の状況によって異なるため、一律の目安を示すことはできません。
  • 学生の例外規定などで対象者の判断に迷う事例を自己判断のまま処理すると、あとから加入漏れが発覚するリスクがあります。
  • 判断に迷う事例は自己判断で進めず、管轄の年金事務所または日本年金機構に個別に確認してください。

まとめ|今日やること1つ

2026年10月1日で「月8.8万円未満なら加入しない」という考え方は使えなくなります。施行まで残り約1.5ヶ月(2026-08-16時点)です。

今日やることは1つで十分です。勤務先に、自分の週の所定労働時間と会社の厚生年金被保険者数(51人以上かどうか)を確認する。この2つが分かれば、10月から自分が対象になるかがその場で判定できます。

人事労務担当の方は、対象者リストの作成と、50人以下なら保険料調整制度を使うかどうかの判断を9月中に終えておくと、10月の給与計算に間に合います。制度の詳細と最新の様式は、厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイト日本年金機構の短時間労働者向けページで確認してください。

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