内水氾濫対策5ステップ|自宅を守るハザードマップの確認方法と止水板・土のうの代用品【今日からできるチェックリスト】
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天気予報で「1時間に100ミリを超える猛烈な雨」と聞くたびに、自宅は大丈夫だろうかと不安になる方は多いはずです。ところが、その不安の矛先はたいてい「近くの川」に向きます。
実際に都市部で多いのは、川があふれる前に下水道や側溝が雨をさばききれなくなって起こる浸水です。これが「内水氾濫(ないすいはんらん)」です。幸い、内水氾濫の対策は大がかりな工事をしなくても、今日からできることがかなりあります。
内水氾濫とは?対策が急がれている理由【結論】
先に結論です。内水氾濫とは、市街地に降った雨が下水道・水路などの排水能力を超え、マンホールや排水溝から水があふれて街が浸水する現象です。堤防が決壊・越水する「外水氾濫」とは仕組みが違い、川から離れた土地でも起こります。国や自治体の資料でも、堤防に守られた都市部の新しい治水課題として位置づけられています(国土交通省)。
しかも都市部ほど、洪水被害に占める内水氾濫の割合は高くなります。全国平均では過去の実績(1993〜2002年)で約半数ですが、堤防整備が進んだ都市部では80%を超えるとされています(国土交通省資料に基づく解説)。「川が近くにないから大丈夫」という安心は成り立ちません。
内水氾濫には大きく2つのパターンがあります。ひとつは雨量そのものが下水道の処理能力を超える型、もうひとつは河川の水位が上がって雨水を流せなくなる「湛水型」です。気象庁は湛水型について、大雨そのものの量を表す「表面雨量指数」と、川の水位の上がり具合を表す「流域雨量指数」を組み合わせた別の基準を設けています(気象庁)。

出典: いらすとや
この記事で紹介する備えは、次の5ステップです。ステップ1は今日5分で終わり、残りは次の買い物のついでに揃えられます。
- 内水ハザードマップで自宅の浸水想定を確認する
- 45Lのゴミ袋を多めに常備し、いつでも「水のう」を作れるようにする
- 玄関・勝手口の止水を、止水板か家にあるもので準備する
- トイレ・浴室・洗濯機の逆流対策を家族で共有する
- 避難のタイミングと経路を、道路が冠水する前提で決めておく
令和8年8月千葉豪雨で何が起きたか
2026年8月13〜14日の「令和8年8月千葉豪雨」では、千葉県に大雨特別警報が発表されました。13日17時20分ごろには柏市・我孫子市付近で1時間約100mm以上の猛烈な雨が観測され、千葉市では複数地点で記録的短時間大雨情報が発表されています。千葉県内の21市4町に災害救助法が適用されました(国土交通省)。
千葉市は雨水対策の基本方針でピーク雨量を1時間65.1mmと想定して下水道整備を進めてきましたが、この豪雨では実測で1時間115mmを観測しました。想定の約2倍の雨量により市内各地で排水能力を超過し、内水氾濫が発生したとみられています(東京海上ホールディングス)。下水道は「想定した雨量まで」しか守ってくれない、という当たり前の事実が表れた形です。
これを受けて国土交通省は2026年9月15日、内水氾濫対策を議論する有識者検討会の設置を発表しました。初会合は9月18日、年内に対策を取りまとめる予定とされています。金子かなこ国土交通相は内水氾濫を「全国どこでも起こりうる都市型災害」と説明しており、浸水想定の精度向上、住民への情報伝達方法、河川・下水道・雨水貯留施設の整備のあり方を検討しているところです(東京新聞)。検討会の正式名称や取りまとめ内容はまだ確定していないため、最新情報は国土交通省の公式発表で確認してください。
ステップ1|内水ハザードマップで自宅のリスクを確認する
対策の出発点は、自宅がどれくらい浸かる想定なのかを知ることです。ここが分かると、「止水板が必要なのか、水のうで足りるのか」の判断がつきます。洪水(外水)のハザードマップとは別に、内水専用の地図が用意されている点がポイントです。

出典: いらすとや
ハザードマップポータルサイトで「洪水・内水」を重ねて見る
いちばん早いのは、国が運営するハザードマップポータルサイトです。「重ねるハザードマップ」で住所を入力し、「洪水・内水」のレイヤーを表示すると、自宅周辺の浸水想定が色分けで表示されます。
確認したいのは次の3点です。(1)自宅の浸水深が何メートル想定か、(2)避難先までの経路が浸水想定区域に入っていないか、(3)アンダーパスや地下駐車場など周囲で低くなっている場所はどこか。内水氾濫は浸水深が数十センチでも、床下浸水や地下の設備被害につながります。
自治体の「内水ハザードマップ」を探す
流域治水関連法の整備により、公共下水道(雨水)を管理する市区町村には「内水浸水想定区域図」「内水ハザードマップ」の作成が義務付けられています(国土交通省)。
ただし公開形式は自治体ごとに異なり、地図検索システム(WebGIS)、PDF、冊子の配布などさまざまです。自治体サイト内で「内水ハザードマップ」「内水浸水想定区域図」と検索し、見つからなければ下水道部局のページをたどると見つかりやすくなります。河川の洪水ハザードマップとは別ファイルになっていることが多いので、必ず両方に目を通してください。
ステップ2|水のう・止水板の代用品
「止水板を買うほどでは……」という家庭でも、家にあるものでかなりのことができます。自治体が公式に案内している方法を中心に集めました。
45Lゴミ袋で作る「水のう」
土のうの代わりに広く案内されているのが「水のう」です。川越市の案内では、45Lのゴミ袋を2枚重ねにし、20〜25L程度の水を入れて空気を抜き、口をしっかり縛ります(川越市)。
中身が水道水なので、雨が降り出してからでも作れるのが最大の利点です。使い終わったら水を流して袋を捨てるだけで、砂を含んで重くなった土のうの処分に悩むこともありません。厚手の45Lゴミ袋を多めに常備しておきましょう。

出典: いらすとや
家にあるものを止水板の代わりに使う
ダンボール箱に水のうを入れ、ブルーシートで包めば、簡易的な防水壁(止水壁)になります。玄関前に一列に並べれば、数センチから十数センチ程度の浸水は受け止められます。
板そのものがない場合は、テーブルの天板・すのこ・タンス・畳を立てかけて止水板代わりにする方法も自治体が案内しています(東村山市/大阪狭山市)。ブルーシートで覆って水が回り込まないようにし、下部を水のうで押さえるのがコツです。
ステップ3|止水板と土のうの比較検討
代用品でしのぐか、家庭用の簡易型止水板を買うか。ここは家の状況によって判断が分かれるところなので、重さ・費用・設置時間を並べて比べておきましょう。
止水板と土のう、どちらを備えるべきか
備蓄型の土のうと、家庭用の簡易型止水板を比べると次のようになります。
| 項目 | 土のう | 家庭用の簡易型止水板 |
|---|---|---|
| 重さ | 1袋あたり約20〜25kg | 例:幅2mで約19kg。女性1〜2人でも運べる |
| 費用 | 1袋あたり数百円程度 | 数万円以上(2026年9月時点の目安) |
| 設置時間 | 積み上げに数十分〜数時間 | 目安5〜10分 |
| 使用後 | 水を含んで重くなり、乾燥・廃棄が難しい。可燃ごみに出せない自治体もあり、企業では産業廃棄物扱いで処分費用がかかる | 水洗いして繰り返し使える |
| 保管 | 場所を取る | コンパクトに収納できる |
(air-bosai/ダイヤモンド・オンラインの比較を基に作成)
価格の目安をもう少し具体的に見ると、玄関幅60cm程度の小型タイプで2万円台前半という製品例があります(アイリスオーヤマの止水板ストレートタイプ「FCB-61L」が21,780円、2026年9月時点)。玄関やガレージの幅が広くなるほど本体も大きくなり、費用は数万円台後半以上に上がっていく傾向があります。ご自宅の入り口の幅を測ったうえで、メーカーサイトで対応サイズと価格を確認するのがおすすめです。
判断の目安はこうです。ハザードマップで浸水想定が出ていない、または浅い地域なら、水のうと代用品で十分に戦えます。一方、浸水想定が示されている地域で、家に高齢の家族がいる、あるいは1人で短時間に設置しなければならない場合は、止水板を検討する価値があります。なお価格や仕様は変動するため、2026年9月17日時点の目安として受け取り、購入前にメーカーや販売サイトで最新情報を確認してください。

出典: いらすとや
小さな隙間は防水テープでふさぐ
玄関・勝手口のわずかな隙間、換気口、サッシまわりなど「板を立てるほどではない小さな隙間」には、防水テープが手軽で効果的です(東村山市・大阪狭山市)。水のうや止水板で受け止めきれなかった水は、こうした隙間から入ってきます。テープは事前に買っておき、貼る場所を一度試しておくと、いざというときに迷いません。
ステップ4|トイレ・お風呂・洗濯機の逆流を防ぐ
内水氾濫で見落とされがちなのが、下水道から室内への逆流です。玄関を完璧にふさいでも、排水口から汚水が上がってくれば床上浸水と同じことになります。ここでも活躍するのが水のうです。
川越市の案内をもとに、設置場所ごとの手順を整理します(川越市)。
- トイレ:便器にビニール袋をかぶせ、その上に水のうを置いて便座を下ろし、動かないよう固定する
- 浴室:排水口をふさぐように水のうを置く
- 洗面台:排水口の上に水のうを置いて押さえる
- 洗濯機:排水口をふさぐように水のうを置く
どれも数分で終わる作業ですが、初めてだと手間取ります。梅雨入り前などに一度練習しておくと、家族の誰でもできるようになります。

出典: いらすとや
マンホールから水が噴き出すのは故障ではない
集中豪雨のときにマンホールから水が噴き出して見えることがありますが、これは下水道管内に溜まった空気を地上へ逃がす安全機構(空気弁)の作動によるもので、故障ではありません(文京区)。
ただし、これは下水道が満水に近づいているサインでもあります。道路の冠水や排水口からの逆流と合わせて現れ始めたら、内水氾濫の危険が迫っていると判断し、行動を切り替える目安にしてください。
地下・半地下は特に注意|武蔵小杉の事例が示すもの
地下室、半地下の駐車場、地下の電気室は、内水氾濫のリスクが最も高い場所です。水は低いところへ集まり、いったん流れ込むと水圧で扉が開かなくなります。

出典: いらすとや
2019年10月の台風19号(東日本台風)では、多摩川の水位上昇により排水樋門から下水道へ水が逆流する内水氾濫が発生し、川崎市武蔵小杉のタワーマンションで地下3階の電気設備が浸水しました。地下配管を経由した逆流が原因の一つと分析されており、長時間の停電・断水につながっています(日経クロステック)。この原因分析は行政の公式な事故調査報告書ではなく、専門メディアによる解析に基づくものである点は添えておきます。
国土交通省は地下空間の浸水対策として、逆流防止(排水ポンプ・逆止弁)と止水板設置の両方が重要だと指摘しています(国土交通省)。集合住宅にお住まいなら、電気室の位置と止水対策がどうなっているかを管理組合に確認しておくと安心です。
ステップ5|避難のタイミングと時系列の行動チェックリスト
内水氾濫は外水氾濫に比べて水位の上がり方がゆるやかで、「じわじわ浸かっていく」傾向があります。住宅が倒壊するような危険性は相対的に低いとされますが、油断はできません。道路が冠水すると側溝や川との境界が見えなくなり、転落・水没事故のリスクが高まるためです(仙台市)。
避難の鉄則は「道路冠水が始まる前」に動くこと。そして地下施設・低地・アンダーパスに近づかず、車での移動を避けることです。時系列で整理すると次のようになります。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 平常時(今日) | 内水ハザードマップで浸水想定を確認する。45Lゴミ袋・防水テープを常備し、避難先と経路を決めておく |
| 大雨の予報が出たら | 側溝や排水口のごみを取り除く。水のうを作る準備をし、車を高い場所へ移動する |
| 大雨警報(浸水害)や浸水キキクルの色が変わったら | 玄関に水のう・止水板を設置。トイレ・浴室・洗濯機の排水口をふさぎ、貴重品を上階へ移す |
| 道路が冠水し始めたら | 屋外への移動は避け、建物の上階へ垂直避難する。地下・半地下からは直ちに退避する |
リアルタイムの浸水危険度は、気象庁の「浸水キキクル」で色分け表示されます。あわせて、大雨警報(浸水害)は表面雨量指数をもとに発表される警報である点も覚えておくと、情報の意味がつかみやすくなります(気象庁)。
まとめ|今日からできる内水氾濫への備え
内水氾濫は、川が近くになくても、堤防が守ってくれていても起こります。都市部では洪水被害の8割超を占めるとされ、千葉市のように想定の約2倍の雨が降れば、整備された下水道でも耐えきれません。それでも、水位の上がり方がゆるやかなぶん、備えと早めの判断が効く災害でもあります。
この記事の5ステップをもう一度並べます。(1)内水ハザードマップで自宅の浸水想定を確認する、(2)45Lゴミ袋を常備して水のうを作れるようにする、(3)玄関の止水を止水板か代用品で用意する、(4)トイレ・浴室・洗濯機の逆流対策を家族で共有する、(5)道路が冠水する前に動くと決めておく。
今日の第一歩は、ステップ1だけで構いません。ハザードマップポータルサイトを開き、自宅の住所を入れて「洪水・内水」を表示してみてください。5分で終わります。そのうえで、次の買い物で厚手の45Lゴミ袋と防水テープをカゴに入れておく。たったこれだけで、次の豪雨のときに取れる選択肢がはっきり増えます。
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