最低賃金が2026年10月1日から都道府県ごとに1,177円へ順次発効|扶養内パートは130万円の壁まで月何時間働けるか東京都の例で試算
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結論
2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金は、47都道府県すべてで2026年9月3日までに答申が出そろいました。引上げ額は54〜65円、改定額の全国加重平均は1,177円で、前年度の1,121円から56円上がります。厚生労働省は、答申額が異議申出の手続を経たうえで「令和8年10月1日から令和8年12月2日までの間に順次発効される予定」としています(厚生労働省)。
扶養内で働く人への影響は「時給が上がる分、同じ壁に届くまでの労働時間が短くなる」ことに尽きます。東京都で130万円の壁を守る場合、必要な労働時間は月約88.4時間から月約84.6時間へ、約3.8時間短くなる計算です(自社試算・後述)。
さらに2026年10月には「106万円の壁」の賃金要件が撤廃される予定で、従業員51人超の職場では判断基準が金額から「週20時間」へ移ります。まず行うのは、給与明細で自分の時給を確認し、新しい時給での月間シフト上限を計算し直すことです。

出典: JPY coins 2 by Tokyoship (based on work by Misogi) / パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
自分は対象か|3つのチェックで確認する
次の3点に当てはまる人は、2026年10月以降にシフトの見直しが必要になる可能性があります。当てはまらない項目があっても、勤務先の従業員数だけは確認しておくと判断が早くなります。
- 扶養の範囲内で働いている(配偶者の扶養、または親の扶養に入っている)
- 年収を123万円・130万円・150万円のいずれかに収めている(103万円を目安にしている人は基準そのものが変わっているので要確認。詳しくは次の見出しで解説します)
- 勤務先の従業員数が51人を超えている(106万円の壁の賃金要件が撤廃されたあと、扱いが分かれる分岐点)
19〜22歳の学生・子どもについては基準額が別になります。詳しくは学生バイトの年収の壁の解説記事にまとめています。
2026年10月時点の「扶養の壁」を整理する
「103万円の壁」という言い方はすでに実態と合いません。令和7年度税制改正で基礎控除と給与所得控除が引き上げられ、所得税がかかり始める給与収入のラインは令和7年分(2025年分)以後、実質123万円になっています(国税庁)。
| 壁 | 内容 | 2026年10月時点の状況 |
|---|---|---|
| 103万円 | 所得税がかかり始める給与収入 | 令和7年分(2025年分)以後は実質123万円へ引き上げ済み |
| 106万円 | 社会保険加入要件のうち月額賃金8.8万円以上という条件 | 2026年10月に撤廃予定。企業規模要件(従業員51人超)は残る |
| 130万円 | 社会保険の被扶養者認定基準(19〜22歳以外) | 変更なし |
| 150万円 | 19〜22歳(特定親族)の被扶養者認定基準 | 2025年10月1日から適用済み |
ここまでの123万円・130万円・150万円が、扶養内パートの多くにとって実際に使う基準です。これに加えて、所得税にはもう一つ細かい規定があります。合計所得金額(給与収入から給与所得控除を差し引いた額)が132万円以下の場合は基礎控除に95万円が上乗せされ、給与収入ベースでは約160万円まで所得税がかからないケースもあります。これは低所得層向けの補正的な仕組みで、扶養内で働く人の多くは123万円前後を目安にしていれば実務上カバーされる範囲です。自分が該当するかどうかまで確認したい場合は、国税庁のページで確認してください。
所得税の壁(国税庁の所管)と、社会保険の被扶養者認定の壁(健康保険組合・年金事務所の運用)は根拠が別の制度です。まとめて「扶養の壁」と呼ばれますが、判断は分けて行ってください。
106万円の壁が消えても「週20時間」が残る
106万円の壁の正体は、社会保険の加入要件にあった「月額賃金8.8万円以上」という条件です。2025年6月13日成立の年金制度改正法に基づき、この賃金要件は2026年10月に撤廃される予定とされています(2026年9月17日時点の情報、厚生労働省・社会保険適用拡大特設サイト)。施行日は政令に委ねられているため、確定情報は同サイトで確認してください。
撤廃後に残る短時間労働者の加入要件は、週の所定労働時間20時間以上、雇用期間2か月超の見込み、学生でないこと、「特定適用事業所」(=従業員51人超の会社)に勤務していること、の4点です。賃金額は問われなくなります。
つまり従業員51人超の職場で働く人にとって、実質的な壁は「金額」から「週20時間」という時間の基準に置き換わります。時給がいくら上がっても、週20時間未満に抑えていれば社会保険の加入対象にはなりません。一方、従業員51人以下の職場では、引き続き年収130万円(19〜22歳は150万円)が被扶養者認定の実質的な壁になります。
時給が上がると壁までの時間はどう変わるか【試算】
| ケース | 守る壁 | 現行時給 | 月の上限目安 | 新しい時給 | 月の上限目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 130万円 | 1,226円 | 約88.4時間 | 1,280円 | 約84.6時間 |
| 全国加重平均 | 123万円 | 1,121円 | 約91.4時間 | 1,177円 | 約87.1時間 |
東京都で130万円の壁を守る場合
東京都の現行最低賃金は1,226円(2025年10月3日発効)で、2026年10月1日発効予定の答申額は1,280円です。現行時給で年収130万円に達する労働時間は約1,060時間(月約88.4時間、週約20.4時間)。新しい時給では約1,016時間(月約84.6時間、週約19.5時間)に縮みます。
注意したいのは、シフトを変えずに働き続けた場合です。月88.4時間のまま新時給で1年働くと年収は約135.7万円となり、130万円を約5.7万円超えます。
全国加重平均で123万円の壁を守る場合
所得税の123万円を基準にする場合も同じ構図です。現行の加重平均1,121円では約1,097時間(月約91.4時間、週約21.1時間)、新しい加重平均1,177円では約1,045時間(月約87.1時間、週約20.1時間)になります。年間で約52時間、月あたり約4.4時間、週あたり約1時間のシフト削減が必要になる計算です。
試算の前提
いずれも「時給×労働時間」の単純計算で、1か月を4.33週として換算しています。深夜割増・残業代・通勤手当は含めていません。130万円の被扶養者認定では通勤手当が収入に含まれる場合があるため、実際の上限はこれより短くなることがあります。あくまで時間の目安として使い、正確な金額は給与明細と雇用契約で確認してください。
シフトを見直す3ステップ
- 給与明細と雇用契約を確認する。 自分の時給、週の所定労働時間、勤務先の従業員数(51人超かどうか)を押さえます。従業員数が分からない場合は人事・店長に確認します。
- 守る基準を決める。 所得税の123万円か、社会保険の130万円(19〜22歳は150万円)か、あるいは週20時間かを1つに絞ります。複数を同時に気にすると判断が止まります。
- 新しい時給で月間上限を計算し、勤務先に伝える。 目標年収÷新時給÷12が月の上限時間の目安です。東京都・全国加重平均以外にお住まいの方も、この式に自分の都道府県の新しい最低賃金を当てはめれば同じように計算できます。自分の都道府県の最低賃金は、厚生労働省または都道府県労働局の発表で確認してください。発効月のシフト希望を出す前に共有すると調整しやすくなります。
発効日と今後のスケジュール
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年10月1日〜12月2日 | 地域別最低賃金の改定額が都道府県ごとに順次発効(10月1日発効は15都道府県とされる) |
| 2026年10月 | 106万円の壁の賃金要件(月額8.8万円)が撤廃される予定 |
| 2027年10月 | 企業規模要件が従業員36人以上へ拡大予定 |
| 2029年10月 | 同21人以上へ拡大予定 |
| 2032年10月 | 同11人以上へ拡大予定 |
| 2035年10月 | 同10人以下まで拡大予定 |
主要都県の答申額は(2026年9月17日時点の集計で)東京都1,280円、大阪府1,231円、神奈川県1,225円、愛知県1,195円、最も低い宮崎県が1,085円とされています(都道府県別一覧の集計)。ただし都道府県別の正式な発効日は厚生労働省の別紙資料と各労働局の発表が根拠になるため、自分の勤務地の発効日は必ず公式発表で確認してください。ここに挙げた5都県以外にお住まいの場合も、自分の都道府県の最低賃金額は厚生労働省または都道府県労働局の発表で確認できます。前段の「月間上限=目標年収÷新時給÷12」の式に、確認した金額を当てはめれば同じように試算できます。目安額が示された段階からの経緯は最低賃金1176円はいつから?の記事にまとめています。
壁を超えてしまうとどうなるか

出典: 中央合同庁舎第5号館 by っ / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)
意図せず基準を超えた場合に起こることを、壁の種類ごとに整理すると次のようになります。
| 超えた壁 | 起こること | 一時的な影響 |
|---|---|---|
| 130万円・150万円(社会保険) | 健康保険の被扶養者から外れ、自分で社会保険料を負担する | 加入直後は毎月の給与から保険料が引かれ、手取りが一時的に減る可能性がある |
| 123万円(所得税) | 超えた分に所得税がかかり、扶養している側の配偶者控除・扶養控除の適用にも影響する | 年末調整や確定申告で扶養している側の税負担が増える場合がある |
社会保険料の具体的な金額は、加入する健康保険組合や年金事務所、給与水準によって異なるため、一律の目安を示すことはできません。ただし社会保険に加入すること自体は将来の年金額や傷病手当金につながる利点もあり、負担だけの制度ではない点は押さえておいてください。
いずれの壁も自動で通知されるわけではないため、年末に気づくと調整が効きません。10月分の給与明細を受け取った時点で、年間の見込み額を一度計算しておくのが確実です。個別の判定や具体的な保険料額は、勤務先の人事担当、年金事務所、税務署に確認してください。
まとめ
2026年10月1日から12月2日にかけて、地域別最低賃金が全国加重平均1,177円へ順次発効します。時給が上がる分、扶養の壁に届くまでの時間は短くなり、東京都の130万円のケースでは月約88.4時間から約84.6時間になります。106万円の壁の賃金要件が撤廃されれば、従業員51人超の職場では「週20時間」が新しい判断基準になります。
今日やることは1つです。給与明細を開いて、自分の時給と勤務先の従業員数(51人超かどうか)を確認してください。そのうえで、守る基準を1つ決めて月の上限時間を計算し、発効月のシフト希望を出す前に勤務先へ伝えておきましょう。
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