住民税を普通徴収から特別徴収に切り替える方法|給与所得者異動届出書の書き方と提出先
転職や退職をきっかけに「住民税が給与から引かれなくなった」「自宅に納付書が届いた」と戸惑う人は少なくありません。住民税の納め方には普通徴収と特別徴収の2つがあり、切り替えるには決められた届出書を市区町村へ提出する必要があります。この記事では、住民税を普通徴収から特別徴収に切り替える方法を軸に、給与所得者異動届出書の書き方と提出先、提出期限までをケース別に整理します。会社の給与担当者だけでなく、手続きの進み方を知っておきたい本人にも役立つ内容です。

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結論:切り替えは「届出書1枚」を住んでいる市区町村へ出すだけ
住民税の徴収方法を切り替える手続きは、どのケースでも「所定の届出書を、従業員が住んでいる市区町村へ、期限までに提出する」という形に集約されます。使う書類は次の2種類だけです。
| シチュエーション | 使う書類 | 記入・提出する人 | 提出先 |
|---|---|---|---|
| 就職・再就職して給与天引きにしたい | 特別徴収への切替申請書(名称は自治体により異なる) | 勤務先 | 従業員が住む市区町村 |
| 転職して前職の特別徴収を続けたい | 給与所得者異動届出書 | 前職と転職先の両方が記入し、転職先が提出 | 従業員が住む市区町村 |
| 退職・休職で普通徴収に変えたい | 給与所得者異動届出書 | 退職する勤務先 | 従業員が住む市区町村 |
提出先は税務署ではなく、従業員が住んでいる市区町村の住民税担当課です。提出するのは勤務先(特別徴収義務者)が基本で、本人が単独で完結させる手続きではありません。
ただし様式の名称・提出期限・添付書類の要否は自治体ごとに異なります。読み進める前に、自分が住んでいる市区町村の公式サイトを開いておくと確認がスムーズです。
本人がすべきこと
書類の記入・提出は基本的に勤務先が行いますが、本人が動かないと手続きが始まらない場面もあります。今の自分がすべきことだけを先にまとめておきます。
- 就職・転職するとき:「特別徴収(給与天引き)にしてほしい」と勤務先の給与担当へ伝える
- 転職で前職の特別徴収を引き継ぎたいとき:退職時に「転職先で特別徴収を続けたい」と伝え、転職先の名称・所在地を前職の会社へ知らせる
- 手元に普通徴収の納付書があるとき:切替が確認できるまで捨てずに保管する
- いずれの場合も:提出期限に間に合うよう、勤務先の給与担当へ早めに依頼する
以降のセクションでは、これらの手続きをケース別に詳しく解説します。
普通徴収と特別徴収の違いを最初に押さえる
特別徴収とは(会社が給与から天引きする方式)
特別徴収は、事業主が特別徴収義務者として、従業員に代わり毎月の給与から住民税を天引きし、市区町村へ納入する仕組みです(東京都主税局)。従業員が自分で納付書を持って金融機関へ行く必要がなく、納め忘れが起きにくいのが利点です。
普通徴収とは(自分で納付書を使って納める方式)
普通徴収は、納税者本人が市区町村から届いた納付書や口座振替で納める方式です。納期は年4回(6月・8月・10月・翌年1月)に分けるか、一括で納めるかを選べます。両者の違いを整理すると次のとおりです。
| 比較項目 | 特別徴収 | 普通徴収 |
|---|---|---|
| 納める人 | 事業主が給与から天引きして納入 | 納税者本人 |
| 納付のタイミング | 毎月の給与から天引き | 年4回(6月・8月・10月・翌年1月)または一括 |
| 納付手段 | 給与天引き | 納付書・口座振替 |
| 主な対象 | 給与所得者(原則) | 例外事由に当てはまる人 |
会社員は原則すべて特別徴収
地方税法第321条の4と各市区町村の条例により、所得税を源泉徴収している事業主は原則として特別徴収義務者となり、従業員の個人住民税を特別徴収しなければなりません(富田林市)。つまり「会社員だが普通徴収のままにしておく」という選択は、原則として認められていません。
普通徴収が認められるのは例外事由に当てはまる場合だけです。北海道の案内では、退職者・退職予定者(5月末日まで)、給与が少なく住民税を天引きしきれない人、給与の支払が不定期な人、他の給与から特別徴収されている乙欄適用者(複数の勤務先を掛け持ちしていて、別の勤務先の給与からすでに住民税を天引きされている人。「乙欄」は年末調整を行わない従たる給与に適用される源泉徴収税額表の区分です)、総従業員数が2人以下の事業所などが挙げられています(北海道)。
普通徴収から特別徴収に切り替える方法
手順1:「特別徴収への切替申請書」を入手する
普通徴収から特別徴収へ変えるときに使うのが「特別徴収への切替申請書」です。名称は自治体ごとに違い、大阪市は「特別徴収切替届出(依頼)書」、横浜市は「切替依頼書」と呼んでいます。多くの市区町村が公式サイトで様式を配布しているため、「(市区町村名) 住民税 特別徴収 切替」で検索して入手します。

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手順2:切り替えられる税額の範囲を確認する
記入前に確認したいのが、切り替えの対象になる税額の範囲です。東京都主税局は次のように案内しています。
普通徴収の納期限が過ぎているもの及び過年度に相当するものは、特別徴収への切替はできません
出典: 東京都主税局「特別徴収にかかる手続きについて」(2026年8月確認)
切り替えられるのは当年度分のうちまだ納期限が来ていない税額だけです。すでに納期限を過ぎた分と過年度分は、これまでどおり納付書で納める必要があります。
手順3:提出先・提出方法を選ぶ
提出先は従業員が住んでいる市区町村です。東京都主税局は特別徴収にかかる届出の提出方法として、郵送・窓口持参のほかeLTAX(地方税の電子申告システム)を案内しています。勤務先が複数の従業員分をまとめて出す場合は、電子提出のほうが手間が少なくなります。

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手順4:提出期限から逆算する
提出期限も自治体ごとに異なります。大阪市では特別徴収を開始したい月の前月10日までに提出することとされ、6月開始を希望する場合は4月10日が締切と案内されています。自分の市区町村の締切は、様式のダウンロードページに併記されていることが多いので必ず確認してください。
手順5:添付書類の有無を確認する
見落としやすいのが納付書の扱いです。練馬区では二重納付を防ぐため、切替対象分の普通徴収の納付書(原本)を添付するよう求めています。一方、江東区では納付書の添付は不要とされており、対応は自治体ごとに分かれます。この点も居住地の市区町村窓口で確認してください。
転職時に前職の特別徴収を引き継ぐ方法(給与所得者異動届出書)
給与所得者異動届出書とは・誰が用意するか
給与所得者異動届出書は、特別徴収されていた従業員に退職・転職・休職などの異動があったときに、勤務先が市区町村へ提出する書類です。転職先でも給与天引きを続けたい場合は、この1枚で特別徴収を引き継げます。用意するのは前職の勤務先です。
前職側の記入欄・転職先側の記入欄
江東区の案内によれば、引き継ぎの流れは次のとおりです。
- 前職の会社が、給与所得者異動届出書の上段(前職側の記入欄)を記入する
- 前職の会社が、その届出書を転職先の会社へ直接送付するか、本人を経由して渡す
- 転職先の会社が「新しい勤務先」欄を記入する
- 転職先の会社が、従業員が住む市区町村へ提出する

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本人がすべきことは、退職時に「転職先で特別徴収を続けたい」と伝え、転職先の名称・所在地を前職へ知らせることだけです。この連絡が遅れると届出書が動かず、いったん普通徴収に切り替わってしまいます。
前職が個人事業主の場合の注意点
前職の給与支払者が個人事業主の場合、届出書の前職側のマイナンバー欄は記入せず、空欄のまま転職先へ送付する取り扱いが多いとされています。個人事業主の個人番号を第三者へ開示しないための配慮です。ただし記入要領は市区町村によって異なる可能性があるため、判断に迷う場合は提出先の窓口で確認してください。
転職先が決まらないまま退職した場合
退職時点で次の勤務先が決まっていない場合、特別徴収を継続する届出は出せないため、いったん普通徴収に切り替わります。その後に就職が決まったら、新しい勤務先から「特別徴収への切替申請書」を出してもらえば特別徴収へ戻せます。フリーランス・個人事業主が会社員として就職するときも、基本的な手続きはこの中途採用者のケースと同じ枠組みです。
フリーランス・個人事業主から就職する場合の注意点
フリーランス・個人事業主として活動していた人は、もともと住民税を普通徴収(自分で納付書を使って納める方式)で納めていた立場にあたります。就職が決まったら、前職から届出書を引き継ぐ必要はなく、前述の「普通徴収から特別徴収に切り替える方法」の手順(特別徴収への切替申請書を、新しい勤務先が居住地の市区町村へ提出する)がそのまま当てはまります。
このとき確認しておきたいのが、手元にある普通徴収の納付書の状態です。切り替えの対象になるのは、当年度分のうちまだ納期限が来ていない税額だけで、すでに納期限を過ぎた分・過年度分は特別徴収に切り替えられず、これまでどおり自分で納める必要があります(前述の手順2を参照)。また、自治体によっては切替申請の際に普通徴収の納付書原本の添付を求める場合があるため(練馬区の例)、フリーランス時代の納付書は処分せず、切替が確認できるまで手元に残しておくと安心です。
特別徴収から普通徴収に切り替える方法
退職・休職で普通徴収へ切り替える手続き
特別徴収から普通徴収へ変わるときに使う書類も、給与所得者異動届出書です。提出期限は異動事由が発生した日の翌月10日までで、提出先は従業員が住む市区町村になります(東京都主税局)。提出方法は郵送・窓口持参・eLTAXから選べます。
副業の住民税を普通徴収にできるか(令和8年度からの変更点)
結論から言うと、令和8年度(2026年度)分からは、2か所以上の勤務先から給与を受け取っている場合の「給与所得分」は普通徴収にできなくなりました。従来できていたことができなくなった、という変更です。
| 時期 | 従たる給与分の住民税の扱い |
|---|---|
| 令和7年度分まで | 確定申告書第二表の「住民税に関する事項」で「自分で納付」を選べば、従たる給与(副業先の給与)分の住民税を普通徴収にできた |
| 令和8年度分以降 | 「自分で納付」の選択肢は給与所得には適用されなくなり、給与から生じる住民税はすべて主たる給与の勤務先で特別徴収される |
中野区は次のように案内しています。
令和8年度以降の住民税については、上記の「自分で納付」を選択した場合であっても、給与から生じる住民税についてはすべて特別徴収といたします
出典: 中野区「給与や所得が複数ある場合の住民税の徴収方法について」(2026年8月確認)
この制度変更は2026年8月時点で複数の市区町村が同内容を告知しているものです。今後さらに制度が見直される可能性もゼロではないため、最新の取り扱いは居住地の市区町村で確認してください。
一方、給与以外の所得(事業所得・雑所得など、業務委託による収入等)に係る住民税は、従来どおり第二表で「自分で納付」を選べば普通徴収にできます(中野区)。副業の形態によって扱いが変わる点に注意してください。
なお、主たる勤務先へ届く特別徴収税額通知書(特別徴収義務者用)には給与から差し引く税額だけが記載され、副業の所得の種類・金額・控除の内訳は載りません。この通知書だけから副業の中身が勤務先へ伝わることはない、というのが自治体の説明です。
給与天引きが始まるまでにかかる期間
届出を出した月からすぐ天引きが始まるわけではありません。江東区は、切替届出書を受け取った日によって天引きが始まる納期が段階的に決まる仕組みを案内しています。令和8年度の例では、6月30日までに受け取った分は第1期分から、8月31日までなら第2期分から給与天引きが開始されるとされており、締切日は年度によって多少前後する可能性があります。
このように、届出から実際の天引き開始までには1〜2か月程度のタイムラグが生じる自治体が多くなっています。大阪市の「開始したい月の前月10日まで」という締切も、同じ事務処理期間を見込んだものです。
天引きが始まるまでに納期限が来る分は、これまでどおり自分で納付書を使って納めます。この間に納め忘れると延滞金が発生する可能性があるため、手元の納付書は切替が確認できるまで捨てないでください。
よくある失敗と対処法
手続き自体は単純ですが、期限と自治体差でつまずくケースが目立ちます。代表的な失敗と対処法をまとめました。
| よくある失敗 | 対処法 |
|---|---|
| 翌月10日の提出期限を過ぎた | 気づいた時点ですぐ提出し、市区町村の住民税担当課へ連絡する。納期限を過ぎた分は特別徴収へ切り替えられないため普通徴収で納める |
| 様式が見つからない・名称が違う | 「(市区町村名) 住民税 特別徴収 切替」で検索する。「切替申請書」「切替届出(依頼)書」「切替依頼書」など呼び方は自治体で異なる |
| 納付書を捨ててしまった | 練馬区のように原本の添付を求める自治体がある。再発行の可否を窓口へ確認する |
| 前職が個人事業主でマイナンバー欄に迷う | 空欄のまま送付する取り扱いが多いとされる。迷う場合は提出先の市区町村へ確認する |
| 転職先が決まる前に退職した | いったん普通徴収で納め、就職が決まったら新しい勤務先に切替申請書を出してもらう |
まとめ:今日やるべき3ステップ
住民税を普通徴収から特別徴収に切り替える手続きは、使う書類さえ分かれば難しくありません。最後に、今日から進められる3つのステップを整理します。
- 住んでいる市区町村の様式を探す — 「(市区町村名) 住民税 特別徴収 切替」で検索し、公式サイトから様式と記入例をダウンロードする
- 自分のケースに合う書類を選ぶ — 就職・再就職なら特別徴収への切替申請書、転職・退職・休職なら給与所得者異動届出書
- 期限から逆算して勤務先へ渡す — 切替は「開始したい月の前月10日まで」、退職などの異動は「翌月10日まで」が目安。勤務先の給与担当へ早めに依頼する
提出期限・添付書類の要否・様式の名称は自治体ごとに違います。本記事で挙げた数値は大阪市・練馬区・江東区・東京都主税局の案内に基づく例です(2026年8月時点)。最終的な確認は必ず居住地の市区町村の住民税担当課で行ってください。
