離婚時の年金分割手続きガイド|合意分割と3号分割の違い・必要書類・請求期限を手順で確認
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離婚が決まったとき、「相手の厚生年金を分けてもらえると聞いたけれど、何から手をつければいいのか分からない」と迷う人は少なくありません。
年金分割は弁護士に依頼しなくても、自分で年金事務所に足を運んで進められる手続きです。ただし請求期限を過ぎると分割そのものができなくなるため、順序と期限だけは最初に押さえておく必要があります。
この記事では、日本年金機構の公式情報をもとに、年金分割の手続きの流れ・必要書類・期限を順番に確認していきます。
年金分割の手続きは3ステップ|まず全体像をつかむ
結論から言うと、離婚時の年金分割は次の3ステップで完了します。窓口はいずれも年金事務所(または街角の年金相談センター)で、家庭裁判所が登場するのは話し合いがまとまらない場合だけです。
| ステップ | やること | 提出先・場所 |
|---|---|---|
| 1 | 「年金分割のための情報提供請求書」を出し、年金分割のための情報通知書を受け取る | 年金事務所/街角の年金相談センター |
| 2 | 按分割合を決める(合意分割の場合のみ) | 当事者間の話し合い。まとまらなければ家庭裁判所の調停・審判 |
| 3 | 「標準報酬改定請求書」を提出して分割を確定させる | 年金事務所 |
3号分割だけで足りるケースでは、ステップ2は不要です。3号分割について日本年金機構は「当事者双方の合意は必要ありません」と明記しており、請求する側が単独で手続きを完了できます。
所要時間の目安として、ステップ1の情報通知書は請求から発行まで3〜4週間程度かかるとされています(郵送の場合はさらに郵送日数が加わります)。地域や時期によって変動するため、離婚が視野に入った段階で早めに動くのが安全です。

出典: いらすとや
合意分割と3号分割の違い|自分はどちらに該当するか
年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。どちらに該当するかで、相手の合意が必要かどうかも、対象になる期間も変わります。まず違いを整理しましょう。
| 比較項目 | 合意分割 | 3号分割 |
|---|---|---|
| 相手方の合意 | 必要(合意できなければ家庭裁判所の調停・審判) | 不要(請求者からの請求だけで成立) |
| 対象となる離婚等 | 平成19年4月1日(2007年4月1日)以後 | 平成20年5月1日以後 |
| 分割対象の期間 | 婚姻期間全体の厚生年金記録 | 平成20年4月1日(2008年4月1日)以後の婚姻期間のうち、請求者が第3号被保険者だった期間 |
| 分割の割合 | 話し合いで決める(上限は2分の1) | 自動的に2分の1 |
表中に近い日付が並んでいますが、意味は異なります。合意分割は「2007年4月以後の離婚等」が対象、3号分割は「2008年4月以後の第3号被保険者期間」を「2008年5月以後の離婚等」で請求できる、という2つの基準日を持つ制度です。自分の婚姻期間・離婚時期がどちらの基準に当てはまるかで、対象になる範囲が変わります。
3号分割とは|相手の合意なしで請求できる
3号分割は、国民年金の第3号被保険者(会社員や公務員に扶養されている配偶者)だった期間について、相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額。毎月の給与や賞与をもとに年金額を計算する際の基準額のことです)を2分の1ずつ分ける制度です。割合は法律で2分の1と決まっており、当事者が交渉する余地はありません。相手が話し合いに応じなくても請求できる点が最大の特徴です。
合意分割とは|按分割合の取り決めが必須
合意分割は、婚姻期間全体の厚生年金記録が対象で、第3号被保険者だった期間に限られません。共働きだった期間も含めて2人分の記録を合算し、その分け方(按分割合)を当事者で決めます。合意できない場合は、家庭裁判所に申立てをして割合を決めてもらう流れになります。詳しい制度説明は日本年金機構の合意分割のページで確認できます。
両方に該当する場合はどうなるか
婚姻期間に3号分割の対象期間が含まれている状態で合意分割を請求すると、同時に3号分割の請求もあったものとみなされます。つまり2回に分けて手続きする必要はなく、1回の請求で両方が処理されます。判断に迷ったら、次の目安が役に立ちます。
- 婚姻期間がほぼ専業主婦(主夫)期間で、平成20年4月1日以後に集中している → 3号分割だけで足りることが多い
- 共働きの期間がある、または平成20年4月1日より前の婚姻期間が長い → 合意分割の手続きが必要

出典: いらすとや
年金分割でもらえる金額の考え方|計算方法の目安
分割の対象になるのは、厚生年金(旧共済年金を含む被用者年金)の報酬比例部分だけです。国民年金の基礎年金部分、婚姻前の期間、自営業者としての国民年金加入期間は対象になりません。「相手の年金の半分がもらえる」という理解は正確ではない、と考えてください。
金額の見込みについては、インターネット上に平均額や簡易な計算式が出回っています。しかし、公的な統計や日本年金機構の一次情報で確認できないものが多いのが実情です。実際の厚生年金額は平均標準報酬額・給付乗率・被保険者月数から計算されます。生年月日や加入時期による経過措置も絡むため、家庭ごとの差が大きく、単純な平均値で自分のケースを見積もるのは危険です。
数字が示せない代わりに、増減の「枠」だけは押さえておきましょう。まず、分割の対象は前述のとおり婚姻期間中の報酬比例部分だけです。次に、按分割合には上限があり、話し合いや裁判所の決定でも2分の1を超える割合は設定できません(下限は「2人の標準報酬の合計に対して、標準報酬の少ない側が現に占めている割合」)。つまり増える分は、多くても「相手の婚姻期間中の厚生年金記録の半分」が上限になります。この枠の中でどのくらいの額になるかは家庭ごとに異なるため、正確な金額はステップ1で取得する情報通知書で確認するのが確実です。

出典: いらすとや
年金分割の手続き方法【ステップバイステップ】
ここからは、実際の進め方を必要書類とあわせて確認します。様式は日本年金機構の様式一覧ページからダウンロードでき、年金事務所の窓口でも受け取れます。
ステップ1|「年金分割のための情報通知書」を取得する
「年金分割のための情報提供請求書」を年金事務所または街角の年金相談センターに提出します。発行される情報通知書には、婚姻期間・分割の対象期間・按分割合の範囲などが記載され、話し合いや裁判手続きの土台になります。取得自体は原則無料で、離婚前でも請求できます。
| 情報提供請求で必要な主な書類 | 補足 |
|---|---|
| 基礎年金番号が確認できる書類 | 年金手帳、基礎年金番号通知書など |
| 戸籍謄本(全部事項証明書)等 | 婚姻期間や当事者の身分関係を明らかにするため |
| 事実婚関係を明らかにする書類 | 事実婚期間も対象に含める場合のみ |

出典: いらすとや
ステップ2|按分割合を決める(合意分割の場合)
情報通知書に記載された範囲内で、按分割合を当事者で話し合います。合意できたら、その内容を公正証書、または公証人の認証を受けた合意書として残します。公正証書の作成は公証役場で行う手続きで、話し合いがまとまってから証書ができるまで手数料や日数がかかる場合があります。具体的な費用・必要書類・所要日数は、最寄りの公証役場に事前に確認しておきましょう。ここで書面化を怠ると、次のステップで請求が受け付けられません。
話し合いがまとまらない、そもそも相手が応じないという場合は、家庭裁判所に調停または審判を申し立てます。裁判所が割合を決めた場合は、調停調書・審判書・判決書などの謄本がステップ3の添付書類になります。3号分割だけで足りる人は、このステップを飛ばして構いません。
ステップ3|「標準報酬改定請求書」を提出する
最後に、年金事務所へ「標準報酬改定請求書」を提出して分割を確定させます。ここまで終えて初めて年金記録が書き換わるため、合意書を作っただけで安心しないことが重要です。
| 標準報酬改定請求で必要な主な書類 | 補足 |
|---|---|
| 基礎年金番号またはマイナンバーが確認できる書類 | 請求者本人の確認用 |
| 戸籍謄本など婚姻期間を明らかにする書類 | 請求日から6か月以内に交付されたもの |
| 按分割合を明らかにする書類 | 公正証書の謄本・抄本、公証人の認証を受けた合意書、調停調書・審判書・判決書の謄本など |
| 請求者と相手方の生存を証明する書類 | 双方の生存確認のため |
請求期限に注意|いつまでに手続きすればよいか
年金分割の請求期限は改正され、2026年8月31日時点では離婚した時期によって扱いが分かれます。ここを取り違えると請求そのものができなくなるため、自分がどちらに当たるかを必ず確認してください。
| 離婚等をした日 | 請求期限 |
|---|---|
| 2026年4月1日(令和8年4月1日)以後 | 離婚等をした日の翌日から起算して5年以内 |
| 2026年3月31日以前 | 離婚等をした日の翌日から起算して2年以内(従来どおり) |
日本年金機構は「令和8年4月1日前に離婚等をした場合については、従前のとおり離婚等をした時から2年以内に請求する必要があります」と説明しています。「期限が5年に延びた」という情報だけが独り歩きしていますが、延長の対象は施行日以後に離婚等をした人に限られる点に注意が必要です。この延長は、同じ時期に民法上の財産分与請求権の除斥期間が2年から5年に改正されたことに合わせた措置です。
期限には特例もあります。期限内に按分割合を定める審判や調停の申立てなどを行った場合は、その事由が生じた日の翌日から起算して6か月を経過するまで請求が可能とされています。詳しい要件は日本年金機構のFAQで確認してください。
よくある失敗が、情報通知書を取得した時点で安心してしまい、標準報酬改定請求を先延ばしにするパターンです。期限のカウントは離婚等をした日が起点であり、情報通知書の取得日ではありません。合意書ができたらすぐに年金事務所へ請求しましょう。
手続きでよくある疑問・注意点
事実婚の場合はどうなる? 第3号被保険者だった事実婚期間が対象になり得ますが、内縁関係の証明方法など個別の要件があります。自分のケースが該当するかは、年金事務所で個別に確認してください。
相手が話し合いに応じない・行方が分からない場合は? 3号分割の対象期間であれば、相手の合意がなくても請求できます。合意分割が必要な部分については、家庭裁判所の調停・審判で按分割合を決める手続きに進みます。
国民年金も分けてもらえる? 分割できるのは厚生年金の報酬比例部分だけで、老齢基礎年金は対象外です。離婚後の生活設計を立てるときは、年金分割で増える額と基礎年金を分けて考える必要があります。

出典: いらすとや
まとめ
年金分割の手続きは、「情報通知書の取得 → 按分割合の取り決め → 標準報酬改定請求」の3ステップです。相手の合意が要らない3号分割なら、話し合いを飛ばして自分だけで請求まで進められます。
やることを1つに絞るなら、まず年金事務所または街角の年金相談センターで「年金分割のための情報提供請求書」を出し、情報通知書を取得することです。発行までに3〜4週間程度かかるとされているので、早いほど選択肢が残ります。金額の見込みも、この通知書があって初めて具体的に検討できます。
そして最後にもう一度。請求期限は、2026年4月1日以後に離婚等をした場合は5年以内、それより前に離婚等をした場合は従来どおり2年以内です。
期限を過ぎると分割そのものができなくなります。自分の離婚日を基準にカウントを確認し、書類がそろい次第すぐに年金事務所へ請求してください。制度の詳細や取扱いの変更については、日本年金機構の公式サイトもあわせて確認しましょう。
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