社会保険の適用拡大で加入基準が変わった【2026年10月1日施行】賃金要件撤廃後の判定基準4つと保険料調整制度
パートやアルバイトで働いていて、「10月から社会保険に入ることになるのか」と気になっている方は多いはずです。事業主の側も、届書の様式変更への対応が始まっています。
この記事では、2026年10月1日に施行された社会保険の適用拡大のうち、加入基準・保険料調整制度・資格取得届の3点に絞って整理します。
結論
社会保険の適用拡大で短時間労働者の加入基準はどう変わったか。2026年10月1日、短時間労働者が社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する際の「月額賃金8.8万円以上」という賃金要件が撤廃されました。
いわゆる「106万円の壁」と呼ばれていた基準です(厚生労働省「短時間労働者の社会保険の加入拡大のポイント」)。
2026年10月21日時点で押さえるべき点は次の3つです。
- 加入判定は4つの基準で行う: 週の所定労働時間20時間以上、雇用期間が2か月以内と定められていない、学生でない、勤め先が51人以上の企業または任意特定適用事業所
- 保険料調整制度の対象は限定的: 2026年10月1日以降に任意特定適用事業所になった事業所(従業員50人以下)の従業員が対象
- 事業主は届書の様式を切り替える: 資格取得届・資格喪失届・区分変更届が新様式になり、旧様式は2027年3月31日で受付終了予定
本文
この記事では、加入判定の基準・保険料調整制度・届書の手続き変更という3つの論点を、厚生労働省と日本年金機構の一次情報に基づいて順に整理します。
まず従業員の方向けに「自分が加入対象になるか」を判定する基準を確認し、続けて事業主向けに保険料調整制度と届書の変更点を解説します。
自分は新たに加入対象になる?短時間労働者の判定チェックリスト

出典: Pixabay
賃金要件がなくなったことで、判定は「時間」「雇用の見込み」「身分」「勤め先の規模」の4点で考えると整理しやすくなります。
4つの基準を表で自己判定する
| 基準 | 加入対象になる条件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 労働時間 | 週の所定労働時間が20時間以上 | 厚生労働省 |
| 雇用の見込み | 雇用期間が「2か月以内」と定められていない | 日本年金機構 |
| 身分 | 学生でない(昼間学生は対象外) | 日本年金機構 |
| 勤め先の規模 | 厚生年金の被保険者数が51人以上の企業、または任意特定適用事業所 | 厚生労働省 |
4つすべてに当てはまれば、加入の対象になります。「所定労働時間」とは、残業を含まない契約上の労働時間のことです。
雇用見込みについて、契約書上の期間だけで判断するのか、更新の可能性も含めて判断するのかは、一次情報では確認できませんでした。迷う場合は、勤め先の管轄の年金事務所に確認してください。
勤め先の規模は会社に確認する
51人以上かどうかは、勤め先の厚生年金の被保険者数で判断します。従業員側からは分かりにくいため、勤め先の人事・総務担当に聞くのが確実です。
51人未満の企業でも、従業員の2分の1以上の同意があれば、短時間労働者を任意で加入させられます。この事業所を「任意特定適用事業所」といいます。
なお、最低賃金の減額特例の対象で月額賃金8.8万円未満の人は、原則として加入しません。ただし本人の申出による任意加入はできるとされています。
賃金要件撤廃で何が変わったか|旧要件と新要件の比較
| 項目 | 2026年9月30日まで | 2026年10月1日から |
|---|---|---|
| 賃金要件 | 月額8.8万円以上 | 撤廃 |
| 労働時間要件 | 週20時間以上 | 変更なし |
| 学生除外 | 学生は対象外 | 変更なし |
| 企業規模要件 | 51人以上 | 51人以上(今後縮小予定) |
月額8.8万円の要件がなくなった理由
厚生労働省の資料によると、全都道府県の令和7年度地域別最低賃金が時給1,016円を超えました。そのため、週20時間働けば月額賃金は自動的に8.8万円以上になります。
つまり、賃金要件は事実上、労働時間要件と重なる状態でした。年金制度改正法に基づき、この重複していた要件が外れた形です(厚生労働省)。
企業規模要件は今後も残る
一方で、51人以上という企業規模要件は残っています。2027年10月から36人以上へと、段階的に対象を広げる予定です。
年ごとの詳しいスケジュールは本記事の対象外とします。勤め先がいつ対象になるかは、厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトで確認してください。
保険料調整制度の仕組み|対象事業所・対象従業員・軽減割合
保険料調整制度は、新たに加入する短時間労働者の保険料負担を、最大3年間軽減する仕組みです。ただし、賃金要件撤廃で加入するすべての人が対象になるわけではありません。
対象になるかどうかは、次の2点で判断します。
- 事業所の条件: 2026年10月1日以降に任意特定適用事業所になった、従業員50人以下の事業所であること
- 従業員の条件: 短時間労働者として加入し、標準報酬月額が12.6万円以下であること
対象は「2026年10月1日以降に任意特定適用事業所になった50人以下の事業所」
日本年金機構のチラシで対象とされているのは、2026年10月1日以降に任意特定適用事業所になった事業所です。2026年9月30日以前になった事業所は対象外と明記されています。
| 事業所の状況 | 保険料調整制度 |
|---|---|
| 50人以下・2026年10月1日以降に任意特定適用事業所になった | 対象 |
| 50人以下・2026年9月30日以前に任意特定適用事業所になった | 対象外 |
| 51人以上の企業(特定適用事業所) | 一次情報では対象と確認できず |
対象になるかどうかは、事業所の規模と任意特定適用事業所になった時期で決まります。判断に迷う場合は、勤め先の管轄の年金事務所に確認してください。
従業員の立場では、勤め先が対象事業所にあたるかを自分で判断するのは難しいです。気になる場合は、人事・総務担当者に確認しておきましょう。
対象になる従業員の2条件
対象事業所の中でも、次の2つをどちらも満たす従業員が対象です。
- 短時間労働者として健康保険・厚生年金保険に加入している
- 標準報酬月額が12.6万円以下(月収13万円未満)である
この「12.6万円以下」は、賃金要件撤廃後の加入基準(8.8万円)とは別の基準です。加入するかどうかの判定ではなく、加入した人の中から保険料軽減の対象をさらに絞るための基準だと考えてください。
標準報酬月額とは、毎月の給与を一定の幅で区切った等級のことで、保険料の計算に使われます。
軽減割合は月収によって変わる
日本年金機構のチラシの例では、保険料の負担割合が月収区分ごとに示されています。3年目は軽減幅が半分になります。
| 月収(標準報酬月額) | 1〜2年目(従業員:事業主) | 3年目(従業員:事業主) |
|---|---|---|
| 8.8万円以下 | 25%:75% | 37.5%:62.5% |
| 12.2万〜13万円未満 | 48%:52% | 49%:51% |
チラシには「保険料額はあくまでもイメージであり、実際の額とは異なります」と注記されています。上の表は一部の区分の抜粋です。
事業主の負担が増えるように見えますが、チラシでは次のように説明されています。
事業主には軽減分を一時的に負担いただきますが、一定期間経過後にお支払いいただく保険料からその分を全額控除するため、最終的に事業主が納付する保険料は増えません。
出典: 日本年金機構チラシ「短時間労働者の社会保険料負担を支援する制度が始まります」(2026年10月) chirashi202610.pdf
事業主の手続き:保険料調整開始申出書は2年以内
制度を使うには、事業所が対象になった日から2年以内に「保険料調整開始申出書」を提出します。
- 提出先: 事務センターへ郵送、または管轄の年金事務所へ郵送・窓口持参
- 電子申請: 不可
申出は自動では行われないため、任意特定適用事業所になった日を控えておくと期限を管理しやすくなります。
資格取得届など手続きの変更点|事業主が今すぐ確認すること
3様式が2026年10月1日から新様式に

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制度変更に合わせ、電子申請・電子媒体申請の様式が変わりました(日本年金機構のお知らせ)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象の届書 | 資格取得届・資格喪失届・区分変更届 |
| 新様式の公開 | 2026年10月1日、e-Govサイトで単票形式・CSVファイル添付方式 |
| 届書作成プログラム | Ver34.00を同日公開 |
| 旧様式 | 2027年3月31日で受付終了予定 |
届書作成プログラムを使っている場合は、Ver34.00に更新されているかを最初に確認してください。
旧様式はいつまで使える?
旧様式は2027年3月31日をもって受付を終了する予定です。それまでは旧様式も受け付けられる予定ですが、切り替えは余裕のあるうちに済ませておくと、期限前後の混乱を避けられます。
労務管理ソフトを使っている事業所は、ソフト側が新様式に対応しているかもベンダーに確認しておくと安心です。
期限とスケジュール一覧
| 日付・期限 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 2026年10月1日 | 賃金要件撤廃、届書の新様式公開、保険料調整制度開始 | 全員 |
| 対象になった日から2年以内 | 保険料調整開始申出書の提出 | 対象の任意特定適用事業所 |
| 2027年3月31日(予定) | 資格取得届等の旧様式の受付終了 | 電子申請を行う事業主 |
| 2027年10月(予定) | 企業規模要件が36人以上に | 該当規模の企業 |
日付は2026年10月21日時点の公表情報に基づきます。最新の情報は日本年金機構の適用拡大特設ページで確認してください。
手続きをしないとどうなるか
保険料調整開始申出書は、提出期限が「対象になった日から2年以内」と定められています。期限を過ぎた場合の扱いは一次情報で確認できなかったため、早めの提出を前提に準備するのが無難です。
資格取得届の旧様式は、受付終了予定日の2027年3月31日以降は使えなくなる見込みです。加入対象者の届出が遅れないよう、新様式での作成手順を先に試しておきましょう。
従業員の側は、自分が加入対象かどうかを会社任せにせず、所定労働時間と契約期間を雇用契約書で確認しておくと、説明を受けたときに判断しやすくなります。
まとめ
2026年10月1日の社会保険の適用拡大で、短時間労働者の賃金要件は撤廃されました。今後の加入判定は、労働時間・雇用の見込み・学生かどうか・勤め先の規模の4点で行います。
保険料調整制度は、2026年10月1日以降に任意特定適用事業所になった50人以下の事業所が対象です。新たに加入する人すべてが軽減を受けられるわけではない点に注意してください。
今日やることは1つに絞ります。
- 従業員の方: 雇用契約書で週の所定労働時間と契約期間を確認する
- 事業主の方: 届書作成プログラムをVer34.00に更新し、資格取得届を新様式で作れるか試す
保険料調整制度の利用を検討する事業主は、日本年金機構の保険料調整制度の概要ページもあわせて確認してください。
