社会保険料は2026年10月給与からいくら変わる?標準報酬月額決定通知書の見方と試算
結論
基本給が変わっていないのに健康保険料と厚生年金保険料だけが増えているなら、原因のほとんどは「定時決定」です。標準報酬月額とは、社会保険料や将来の年金額を計算するときの基準になる金額のことで、実際の給与を区切りのよい幅ごとに当てはめたものです。この標準報酬月額は年1回決め直され(これが定時決定です)、新しい額は9月から翌年8月までの各月に適用されます(日本年金機構、2026-08-20時点)。
社会保険料は当月分を翌月給与から控除する会社が多数派のため、9月分の保険料は10月支給の給与に反映されるのが一般的です。ただし給与規定で当月控除としている会社では9月支給分から変わります。まず自社がどちらの方式かを給与明細で確かめてください。
判断は次の2分岐で足ります。
- 慌てなくていい: 4〜6月に残業代や手当が多かった。この場合、保険料が上がるのは制度どおりの動きで、翌年の定時決定で再び見直されます
- 確認したほうがいい: 4〜6月の給与に心当たりがないのに等級が動いた、または入社・退職の時期から対象外のはずなのに改定されている。決定通知書と給与明細を突き合わせ、会社の給与担当に確認します
確認する4つのポイント
以下では、(1)自分が定時決定の対象か、(2)手取りがいくら変わるか、(3)決定通知書のどこを見るか、(4)会社に確認すべきか、の順に整理します。金額の例は協会けんぽ加入者を前提としています。健康保険組合(組合健保)に加入している場合、健康保険料率は組合ごとに別建てのため、試算はあくまで目安として読んでください。
定時決定の対象になる人・ならない人
定時決定(算定基礎届)は、事業主が7月1日時点で在籍する被保険者と70歳以上被用者について、4〜6月に支払った報酬を届け出る手続きです。対象になるのは支払基礎日数(1か月のうち給与の支払対象になった日数)が17日以上ある月の報酬です。これをもとに日本年金機構が年1回、標準報酬月額を決め直します。
2026年度(令和8年度)の算定基礎届の提出期間は、2026年7月1日(水)から7月10日(金)まででした(日本年金機構、2026-08-20時点)。提出時期によっては決定通知書の発送が遅れることがあるとされているため、まだ手元に届いていなくても異常とは限りません。
対象外になる主なケース
- 6月1日以降に資格取得(入社)した人
- 6月30日までに退職した人
- 7月改定の随時改定(月額変更届)を提出する予定の人
- 8月または9月に随時改定が予定されている人(算定基礎届の報酬月額欄を空欄で提出する運用)
自分のパターンから見当をつける

出典: Pixabay
| 4〜6月の状況 | 9月分からの標準報酬月額 | 補足 |
|---|---|---|
| 残業代・通勤手当などが多かった | 上がる可能性がある | 非固定的賃金も報酬に含めて平均する |
| 4月に昇給があった | 上がる可能性がある | 条件を満たせば随時改定で7月分から先に改定されている場合も |
| 特に変化がなかった | 据え置きの可能性が高い | 等級が動かなければ天引き額も変わらない |
随時改定(月額変更届)は、定時決定とは別に年の途中で標準報酬月額を見直す仕組みで、次の3条件をすべて満たした場合に行われます(日本年金機構)。今回のテーマである定時決定にとっては「対象外になる理由の一つ」なので、要点だけ押さえれば十分です。
- 昇給・降給など固定的賃金の変動があった
- 変動月から3か月間の報酬平均で算出した標準報酬月額が、従前より2等級以上変わった
- その3か月とも支払基礎日数が17日以上あった
ここで誤解が多いのが残業代です。残業代のような非固定的賃金だけが増減しても、固定的賃金が動いていなければ随時改定の対象になりません。つまり「4〜6月だけ残業が多く、7月以降は減った」人は、上がった保険料が自動で下がることはなく、翌年(2027年9月分)の定時決定まで据え置かれます。
10月の給与でいくら変わるか
金額は等級表を引かなくても、おおよその換算ルールで見当がつきます。東京都・40歳未満(介護保険料に該当しない)・協会けんぽ加入という前提なら、本人負担は健康保険が4.925%(令和8年度の東京都9.85%の労使折半、2026-08-20時点)、厚生年金が9.15%(18.3%の労使折半)です。合計14.075%なので、標準報酬月額が2万円上がると本人負担は2万円×14.075%=約2,815円増える計算になります。

出典: Pixabay
| 項目 | 標準報酬月額26万円 | 標準報酬月額28万円 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 健康保険料(本人4.925%) | 約12,805円 | 約13,790円 | +約985円 |
| 厚生年金保険料(本人9.15%) | 約23,790円 | 約25,620円 | +約1,830円 |
| 合計(月) | 約36,595円 | 約39,410円 | +約2,815円 |
上表は料率を単純に掛けた概算です。実際の徴収額は等級ごとの保険料額表に基づくため端数が異なります。正確な額は協会けんぽの都道府県別保険料額表と日本年金機構の厚生年金保険料額表で確認してください。厚生年金保険料率は2017年9月分以降18.3%で固定されています。
都道府県で健康保険料率が違う
健康保険料率は協会けんぽの支部(都道府県)ごとに異なります。令和8年度は2026年3月分(4月納付分)から改定されました。今回確認できた4都府県は次のとおりです。
| 都府県 | 令和8年度 | 令和7年度からの変化 |
|---|---|---|
| 東京都 | 9.85% | 引き下げ(9.91%から) |
| 大阪府 | 10.13% | 引き下げ(10.24%から) |
| 神奈川県 | 9.92% | 変更なし |
| 愛知県 | 9.93% | 引き下げ(10.03%から) |
出典は全国健康保険協会の令和8年度保険料率(2026-08-20時点)です。ここに挙げた4件以外の都道府県は同ページで確認してください。料率は年度ごとに見直されるため、来年度も同じとは限りません。
40〜64歳は介護保険料が上乗せされる
40歳以上65歳未満の人は、健康保険料に介護保険料率が上乗せされます。令和8年3月分からの介護保険料率は全国一律1.62%(令和7年度は1.59%、2026-08-20時点)とされており、労使折半なら本人負担は0.81%です。標準報酬月額28万円なら月あたり約2,268円が加算される計算になります。誕生日の関係で40歳になった月から徴収が始まる点も、手取り減の原因として9月・10月と重なりやすいところです。
標準報酬月額決定通知書のどこを見るか
決定通知書(被保険者標準報酬決定通知書)は日本年金機構から事業主へ送られ、そこから本人に交付されます。渡され方は会社によって異なり、紙で配布されることもあれば、給与明細と同じ社内システム上で閲覧する形のこともあります。手元にない場合は会社の給与担当に交付方法を尋ねるのが早道です。
複数の実務解説によれば、通知書には主に被保険者整理番号・氏名、改定年月、健康保険と厚生年金保険それぞれの標準報酬月額と等級が記載されます。ここでいう「等級」とは、標準報酬月額を段階(ランク)ごとに区切った区分番号のことです。等級が1段階動けば、標準報酬月額もそれに応じて1段階分変わったことを意味します。確認する項目は次の3つに絞れば十分です。
- 改定年月が「令和8年9月」になっているか
- 健康保険の標準報酬月額(等級は原則1〜50等級)
- 厚生年金保険の標準報酬月額(等級は原則1〜32等級。上限があるため健康保険と額が異なることがある)
健康保険と厚生年金で標準報酬月額が違っていても、それだけでは誤りとは言えません。厚生年金は上限等級が低く設定されているためです。
慌てなくていいケースと、会社に確認すべきケース
保険料が上がること自体は、必ずしも損とは限りません。標準報酬月額は将来受け取る老齢厚生年金の額や、傷病手当金・出産手当金の算定基礎にも使われます。負担が増える一方で、給付の計算基礎も同じ額で上がるという関係です。
残業増による一時的な上振れは、冒頭の「慌てなくていい」ケースと同じ考え方で、翌年の定時決定で見直されます。逆に固定的賃金が下がった場合は、条件を満たせば随時改定で年の途中に下がることもあります。
一方、次に当てはまるなら確認したほうが確実です。
- 4〜6月の給与実態に照らして等級が明らかに想定と違う
- 6月30日までに退職した、または6月1日以降に入社したのに改定されている
- 7月に随時改定が行われたはずなのに、定時決定の結果が上書きされているように見える
窓口はまず会社の給与担当です。届出内容そのものに疑問が残る場合は、事業所を管轄する年金事務所に問い合わせる流れになります。
2026年3月分・4月分の保険料率改定とは別の話
今年は保険料に関する変更が重なっているため、混同しやすくなっています。整理すると次の3つは別物です。
| 変更 | 適用開始 | 内容 |
|---|---|---|
| 協会けんぽの都道府県別保険料率改定 | 2026年3月分(4月納付分)から | 支部ごとに料率を見直し。令和8年度は据え置きまたは引き下げ |
| 子ども・子育て支援金 | 2026年4月分(5月納付分)から | 健康保険料に全国一律0.23%を上乗せ |
| 定時決定による標準報酬月額の改定 | 2026年9月分から | 4〜6月の報酬をもとに等級を決め直す |
前の2つは「率」の変更で全員が対象、9月の定時決定は「等級」の変更で人によって上下が分かれます。10月の給与で天引き額が動いたなら、まず疑うのは3つ目です。
まとめ

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今日やることは1つです。次の給与明細(多くの会社では10月支給分)を開き、健康保険料と厚生年金保険料の欄を前月と見比べてください。増減があれば、原因は9月分から適用された標準報酬月額の改定である可能性が高くなります。
そのうえで、決定通知書の「改定年月」と等級を確認します。4〜6月に残業代や手当が多かった心当たりがあるなら、制度どおりの動きなので対応は不要です。心当たりがない場合だけ、会社の給与担当に届出内容を確認しましょう。
自分の都道府県の料率は協会けんぽの令和8年度保険料率のページで、制度そのものの条件は日本年金機構の定時決定のページで確認できます(いずれも2026-08-20時点の情報)。料率も等級表も年度ごとに見直されるため、金額を詰めるときは必ず最新の公式資料に当たってください。
